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道場物語 第7話 レストルーム

 

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道場物語、今回はちょっと趣向を変えて、私の経験談を話してみることにする。

 

私がアラバマで指導始めた昔は、道場生は殆どが若い人(青年、中年)たちであった。
それも殆どが男であった。子供は非常に稀であった。
若い女性の方が子供達より多かった。
僅かだが家族全員で稽古をしている人達もいた。
家族の中には当然子供とが混じる。
子供も5~6歳の子から10歳から12歳ぐらいいろいろだった。
あの頃は指導の際、子供だからといって特別扱いはしなかったように記憶している。週末の土曜日のクラスは昼前の稽古だけであった。
午前中と言うことで、若い人も出席することはあるが少なく、比較的に家族連れ、主婦、中年のオジサン、子供たちが多かった。
子供の数が知らぬうちに増えてきた。
ある日、アドバイザーが子供だけのクラスをつくったら良いのではないかと進言してきた。いろいろ考えた末に週二回午後に子供だけのクラスを新設した。

 


もちろん昔の話、内弟子君達はいない。インストラクターは私だけである。
最初は簡単に指導できると思ったのだが、実際に指導して、あどけない子供がなんとモンスター変身するのを発見した。
子供は穢れが無い、無垢である。愛らしい。純粋である。いろいろ子供を賛美した言葉が有り余るほどあるが、全くその反対の言葉もあるのである。ときとして子供は残酷である。平気で嘘をつく・・・ホントウである。
話を戻す。
子供のクラス、4~5人ぐらいまでは余裕を持って、隙を与えずがっちり指導できる。10~15人ぐらいになると、ちょっと気合を自分に入れる。
25~30人ぐらいになると頭から足の指まで気合を入れなくてはいけなくなる。汗がどんどん流れ、必死である。
ちょっと隙を与えるとクラス全体が遊びになる。
あの頃は私は中年であった。自分では、まだ俺は若いと思っていた。
稽古が始まる、最初が肝心である。先ずは私の気合いを見せる。
竹刀を持って、マットを思い切りたたく。激しい音がする。子供達はその音でビックと緊張する。その瞬間カラテは遊びではないぞう…と言って一人一人の子供の顔を真剣な顔で見る。
「ディス イズ ラブ ステッキ。 イフ ユー ドン リッスン、アイ ゴノ ユーズ ディス ステッキ…オッケイ!」
凄い英語である。でも何とか通じるのである。
しかし、中にはポカーンと私の顔を見ている子供もいた。
私の素晴らしい英語が通じないのである。
勿論並んだ子供中から「ママ~!アイ ドンライク ヒム」とか、「アイム スケアー」と言って泣きだす子がいる。
一人泣くと伝染病のように他の子供に移りだし大変である。
最初の頃は、子供が泣きだすと私も一緒に泣きたくなってあわてたが、慣れてくると動じなくなった。
「ユー ドン ライク カラテ…オッケイ。ママ、 テイク ヒム ホーム」と言って母親に後は任すようにした。
ところが、中には子供が泣いてもそのまま教えてくれと言う健気な母親もいる。

 

クラスが始まる。
「黙想、クローズ ユァ アイ」私だけが眼を閉じていた。
子供達はアッチ向いたり、コッチ向いたり眼などつぶらないのである。
そこで黙想と言って、私は眼を開けて子供たちを見守ることにした。
私の厳しい目線を受けて、それからはみんな眼をつぶり出した。
ところが眼をつぶるが今度は身体が動きだす。
身体だけでなく口も動きだす。頭がオカシクなった。
「オープン ユァ アイ」いよいよ突いて蹴ってが、始まる。
ただ突いたり蹴ったりでは子供たちが飽きがくる。
跳んだりはねたり、走ったりもう大変である。
あの頃は何か極真カラテ発展の使命感が溢れていたので、一クラス一クラス真剣勝負の様にして指導していた。
ところが子供は私より頭が良かった様である。稽古中に一人子供が手をあげる。「ワット?なんだ?」
「アイ ニード ゴー レストルーム RESTROOM」少し経ってまた子供が手をあげる。次にもう一人、もう一人とその数がだんだんと増えていく。こちらは夢中で指導している。

 

「前屈立ち」子供達も「ゼンクツダチ」と唱和する。カラテ用語は全部日本語である。
もちろん中には全く聞く耳を持たない子供がいる。ただ口をパクパク開けて誤魔化している。最初は騙されたが直に見付けた。
罰は腕立て伏せである。一発で効いた。
なんとなく指導していて、子供の数が少なくなったのではないか、おかしいな~、と思った。もう一度ガキ(子供ではなく、ガキはあの時の私の正直な気持ちでした)の数を勘定すると3人ばかりどこかに消えてしまった。
道場の端にあるトイレットのドアを開けると、なんと3人のガキが一人は便器に座って後の二人は鏡を見ながらヒソヒソと話しをしていた。
「何やっているだぁー?」と怒鳴る。
一人子供が「アイ アム レスティング(休憩)」と答えてきた。
英語でも、便所はいろいろと言い方がある。
ラバトリー、トイレット、ウォッシュルーム、WC(ウォッシュ クローゼット)
一瞬、うーんと唸った。あどけない顔、つぶらな瞳、そんな顔の中から出てきた台詞である。唸るしかなかった。
見学席にいた母親らしい人が両手をあげて肩をすくめる。私もまねて肩をすくめる。
「ユー イナフ レスト。 ナウ ユーガイズ プッシュアップ ハンドレッド(100回)オッケイ?」
「オッケ~イ」と呟くように返事がくる。
「ゴーアヘッド」
「ママ~。アイ ドンライク ヒム」
「イエス。 アイ ドンライク ユー トゥ」
英語でも便所はいろいろある。

コメント (0) | 2015/08/20

内弟子 in America,道場物語

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