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国際大山空手道連盟 WORLD OYAMA KARATE ORGANIZATION

極真 第11回全世界空手道選手権 観戦記

この極真の世界大会の観戦記、予定としては昨年の12月上旬に載せることになっていたのだが、いろいろ事情があって遅れてしまった。
テレビで既に極真の世界大会の激戦が放映されたと、ある支部長が言ってきた。
この観戦記を参考にして見るといい勉強になると思う。

 

今回の来日は極真会館主催の第11回全世界空手道選手権大会と極真会館創立50周年記念式典の出席である。
私と総主を松井館長が招待してくれたのである。
残念ながら兄総主は体調の調子が良くないので、私だけの出席になった。

 

日本に着いたのが11月19日であった。
空港にはいつも郷田師範と直井先生が迎えに来てくれるのだが,今回は郷田兄大会の準備やらで、迎えに来られないと事前に連絡があった。
直井だけが迎えに来てるはずであったが、・・・ロビーは閑散として誰も声をかけてこなかった。
「アレ、もしかして日にちを間違えたのか~、俺も歳だからな~、ボケたのかなぁ~・・」と、一瞬あせりが出た。
とりあえず直井に電話をすることにした。しばらくして直井が出る。
「もしもし、オイ、今空港だけど、お前、迎えに来ないの?」
「オス、最高師範今バスです。もう少しで着きます~」と囁くような声。
と言いう訳で、また待たされたのである。やってくれるよ、うちの大幹部。
待つこと約30分、直井いつものユニホームに長方形の顔、汗をかきながらロビーを走ってくる。「オス、最高師範、早かったですね~」
「君ねー、私が飛行機のスケジュール決めるわけ?デルタ航空は私のプライベートな会社じゃないのよ、ボーイング777の運転、じゃなかった操縦、できるわけないでしょう・・・君はミスターコンピューターでしょう、チェックすれば到着時間分かる訳でしょう」
直井ただ「オス、オス」と言いながら、細い柔和な眼をパチパチと繰り返す。
成田からスカイライナ―に乗る。いつもは郷田兄がいるので直井はただ横で聞き役で終わりなのだが、今日は私と二人だけである。
じっと無言で直井の顔を見る。直井、無言に耐えられないのか目線がアチ、コチに忙しく動く。それでも黙って直井の顔を見つめていると、直井の額から汗がタラ~、タラ~と流れた。ホント直井は優しい。だけど当てにできない。

 

無事ホテルに到着。何時もの角部屋にチェックインして、すぐカッパを着て軽いジョギングに出る。直井に「御役目御免」と告げると、満面に笑みを湛え「オス、失礼します」と飛び出ていった。
窓から直井の姿を見つけると、余ほど嬉しかったのか、スキップをしていた。

 

次の日11月20日、それから三日間、朝から夕方まで観戦したのであるが、正直に告白すると、時差でボウーとした頭の状態での観戦となって仕舞った。
毎日激しい試合の連続である。気合を入れて観戦しているのだが、選手には申し訳ないが、最終日になるころは、選手と同じように、私もスタミナが無くなくなってきた。

 

 

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最終日11月22日、いよいよ決勝戦である。
頑張らないといけない。なんとか気合を入れて朝席につく。
左隣に座っている頭髪が真っ白になってしまった、磯部師範を見る。
何故か私と同じようにボーとした顔つき。
「どうしたの・・・?」
「オス、昨日ちょっと遅くまで飲んでしまったので・・・・オス」
「いろいろ大変だね・・・」と私。右隣にはシャキとした顔の郷田師範である。
私が「貴方も昨日遅かったの?」郷田兄「もちろんよ、秒刻みで各国の支部長と付き合わないと…いろいろ忙しいですヨ」
「チョット貴方、いつから英語やロシヤ語話せるようになったの?秒単位の忙しいスケジュール、まさか毎日宴会じゃないでしょうね?」
「違いますよ、真面目なミーティングです。でもお酒も飲みますヨ、子供の話し合いじゃないんだから・・・」「彼らも貴方の田端語?分かるの?」
「エッ、勿論。私が住んでる田端が世界の中心なんですヨ」
「凄いね~田端、あなたの道場も田端ですよね」
「各国支部長とのミーティングには通訳が付くの、ほらあそこに」と指をさす。
スレンダーなロシヤ美人が場内アナウンスをしていた。納得である。
聞けば、ロシヤから空手を習いに来た女性とのこと、なんと田端語じゃない、日本語を話せるとのことである。
「しかし、相変わらず、元気いいね~」と私、思い切っての皮肉である。
ご本人はまったく意にかえさない。「一晩寝ればどうって事ないの~」である。
「ウ~ン」と唸って、磯部と私、顔を見合わせて沈黙である。
昼飯時、「ハイ、ハイ、ハイ昼飯、さぁ役員室に行こう…」である。
凄い~食欲である。パクパク弁当を食べる。そこで磯部とまた私、顔を見合わせる。思わず二人で「マイリマシタ・・」と出てしまった。
郷田師範お手伝いの女性に「熱ーい、コーヒー。味はどうでもいいから、熱ーい、コーヒー。OK?」である。「OK」と英語である。
私は弁当を食べきれず残してしまった。すぐに辛辣な言葉がとんで来る。
「だ~らしがない、チャンと気合を入れて観戦記書かなくちゃだめだよ」
と言う訳で観戦記である。
初日から頭に残った選手や試合内容を書いてみた。

 

 

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11月20日 世界大会初日朝9時に郷田師範がホテルに迎えに来る。
うちの支部長直井先生の車で会場へ。何十年ぶりの東京体育館である。
いろいろな思い出が甦り感慨深くなる。

 

試合内容の変遷
初日の試合は64試合。一番印象に残ったのは、ロシヤの選手と日本の選手であった。ロシアの選手は30名以上出場していたようだ。その数もダントツであったが、どの選手も実力があり確かな組手の型を持っているように見えた。
初日の試合を見ながら世界大会の試合内容の移り変わりを感じた。
私の独断で言うと、第一回大会から第三回大会の頃まで日本選手の下段回し蹴り対し海外の選手は受けがしっかりと出来ていなかった。
もちろん中には何とか工夫をして受けていた選手もいたが、数は少なかった。
下段の攻めが効いたので上段の回し蹴りが生きた。
第1回大会では日本選手が上段回し蹴りや下段回し蹴りで勝ち進む試合が多かったように記憶している。私が極真を去った後も、郷田師範が全日本や世界大会のビデオ、DVDなどを毎回送ってきてくれた。
資料を見ると世界の空手のレベルが大会ごとに上がっている。
会を重ねていくうちに海外の選手が下段の蹴りをマスターした後の試合内容は様相を変えて見えた。突き、打ち技で顔面を攻撃できないルールでは、どうしても相手との間合が近くなる。最初の頃は間合が近くとも下段の蹴りがあったが、回を重ねるごとに相手も下段を返してくる。
世界の空手のレベルが想像以上に上がり、下段の蹴りをマスターしたのである。
今度は下段だけではなく膝蹴りも身長を利用して使いこなしてくる。
そこで下段を生かすためには突いて蹴るか、相手の攻撃をかわして下段を返すかである。相手と体が触れる間合では上段回し蹴りは殆ど使えない。
無理に苦し紛れに上段へ蹴る選手もいるが相手の軽い突きで体を崩してしまう。
審判の印象も悪くなる。そこで上段を狙う蹴りは、技の間合と角度を取るために飛ぶわけである。飛び後ろ回し蹴りを使いだした。
特にロシヤの選手が上手かったように見えた。しかしその飛び後ろ回し蹴りも大会の回を重ねるうちに知り尽くされて、読まれ易くなったように感じる。
今回の大会でも殆どの選手が飛び後ろ回し蹴りを上手くかわしていた。

 

印象に残った選手
初日で印象に残った選手は何人もいたが、5~6人の名前を挙げてみる。
Aブロックの荒田選手はガンガン前に出て打ち合い、蹴り合うというタイプに見えた。恵まれた体。それに精神力が溢れている様な組手であった。
極真の全日本、世界大会は壮絶な試合を2日間、3日間と続けて激しく戦う。試合は想像を超えた過酷な世界であり、身体も精神もボロボロの状態になるが、それでも突いて蹴るわけである。
身体、意識の感覚が無くなっても、前々と出る魂、精神力がなければ直ぐに諦めが出てしまう。荒田選手はその自分を支える強靭な魂を持ってる。
問題は海外の選手も日本選手に負けないような気合、気迫を育ててきているということである。
彼等は、日本選手と同じように大会ルールを熟知して何年も何か月も、すべての楽しみ娯楽を犠牲にして自分と戦いながら自分の組手の型を身体の中に、魂の中に植え付けている・・・私はそう見えた。
息があがり、頭の中が真っ白なり、無意識の状態になっても自分の組手の型、技が出る、そこまでの稽古を積んで来ていたのではないかと想像できる。
確かに気合、気迫で勝利を収めることもあるが、私の独断で言わしてもらえれば、最後に勝利を収める者は基本の技を錬って、自分の組手の型を身に着けている者のように見える。

 

最終日まで勝ち上がってくると、どの選手も激しい三日間の激闘の疲れが出る。
しかし、ここからが本当の勝負になる。
荒田選手一見するとそれほど器用に技をこなす様には見えなかった。
息があがってくる延長戦に入ると、荒田選手の構えが開き、胸が前へ出て、下半身と上半身のバランス、何よりも必要な技のタメが落ちてしまうように感じた。苦しい延長戦に入ると、技よりも気合が、気負いのようになって前へ、前へと出ているように私からは見えた。
しかし、前に述べた様に、海外の選手も日本の選手に負けないような、魂、気合、精神力を持っている選手が、極真の大会には何時もごろごろいる。
勝負の分かれ目は、自分を支える技、鋭く使える技を最後まで持って、使いこなせるかどうかと言うことになるのではないかと私は思う。
荒田選手が無意識のうちにも構えを崩さず出せる技を身に着けると、大変なことになると私は勝手に想像してしまう。
支える技、鋭く切れる技は一つか二つで充分である。
稽古も試合もまず自分との戦いから入る。技や動きを身に付けていく中で、素直さと自分を信じる頑固さが問われる。
素直さと頑固さをいかに使い分けることか、簡単なようでこれが難しい。
時として我々は知らないうちに「我」がでてしまい自信が過剰になる。
体に恵まれた選手は、時として構え、足の運びが疎かになり、自分の組手が荒くなりがちである。

 

Bブロックの鎌田選手は技や動きがナチュラルに出ていた。
試合の駆け引きも無駄なくこなしていた。
勘が良く多彩な技を上手くこなせるタイプに見えた。
一般的に言って器用な人は、息があがり苦しくなると諦めが出る人が多い。
技に走るタイプはどうしても、自分の技が効かなくなるとメンタルな面の弱さが前に出てきてしまうようである。
“あと一発突く、もう一つ下段を蹴る・・・心の底で僅かに残っていた気合が囁く。心の上のほうで、もういいや、この試合はここで諦めよう・・とささやきが聞こえる。鎌田選手ときどき上の方の囁きを聞いてしまうのではないかと、勝手に想像してしまう。
鎌田選手の課題はその点にあるのではないかと思った。
恵まれた身体、運動神経も抜群にあるように見え、充分チャンピオンを狙える素質を持ってるように感じた。まだまだ伸びる素質を持ってる選手である。

 

Cブロックの小沼選手、タイプが荒田選手と同じように見えた。
身体が小さいが自分の倍もある相手に真正面から突きあい蹴りあっていた。
根性の塊のように見えた。羨ましくなるほどの気合、気迫である。
ただその気合、気迫が技や動きよりも前に出過ぎてしまってるように感じた。
大きな身体の相手に対して、自分の身体のハンデをものともしない気合は素晴らしいのだが、その気合が技や動きより先に出てしまうと、技や動きの切れや鋭さが落ちる。
前にも話したが、全日本や世界大会に出場する選手は皆それなりの根性は持っている。根性だけでは勝ち上がれないと思う。
心技体、トータルな戦いになると私は思う。
重ねて言うと、稽古はまず自分との戦いから入るのである。

 

Dブロックで強く印象に残ったのは、アメリカから来たソウタ・ナカノ選手である。身体は小さいほうであったが、動き技の駆け引きが目を惹いた。
なんと言っても技を出す前の、足の運び、構えが良かった。
だから、鋭いシャープな技が連続して出た。あんな選手がアメリカにいるとは正直に言って驚いた。どんな先生に指導してもらっているのか興味がわいた。
プログラムを開いて調べたらLAの支部長タク・ナカサカ師範とあった。
なんと私の孫、ラウリーが入門した道場である。
残念ながら今は稽古を休んでいるらしい。
ソウタ・ナカノ選手、まだまだ伸びる選手のように感じた。
突きも蹴りも足の運びも鋭く、何よりも気合、気迫と技が溶け合っていてよかった。試合態度も清々しかった。

 

ロシア軍団、鋭い突きとパワフルな下段の蹴り
ロシヤのどの選手もそれなりの実力を持っているように感じた。
特に突き技がシャープで鋭かった、同時に下段への蹴りがパワーフルであり、かつ強烈であった。
ロシアの選手が際立って鋭い突きやけりを出せるのは、構えと足の運びで技に必要なタメを自然に作っているからである。
手技で顔面への攻撃が禁止されているルールでは、前述したようにどうしても間合いが近くなる。正拳のように直線的に突く技は、技の間合いを潰されて出しにくくなる。相手の身体と触れるぐらいの間合いになると、腰が高くなりがちになり浮いてしまう。腰が浮くと、足首、膝のタメが消えて正拳を出しても腕だけの突きになってしまう。
弱い技、パワーの落ちた技はかえって相手に自信を与えてしまう。
正拳が出しにくくなり、そこで下突きを出す。顔面が開いてしまう。
膝蹴りや飛び蹴りなどで狙われる。よくこんなパターンの試合を見る。
ところがロシアの選手は、この近い間合いを足の運びで上手く相手との角度をアレンジしていた。
特に左足前の半身の構えから右足前の半身の構えに変わり、又その逆に変わっていた。左、右と態勢を変わりながら相手のとの間合い角度をやや斜めにとり、身体全体のバネ、タメを効かした突きを出していた。
その突き技も振り打ちのようにいくらか外から曲線を描いて突いてくる。
近い間合いを相手の斜めの角度から間を生かして、曲線を描いて突きこんで来る。この角度だから、身体全体のバネを充分に使った鋭いパワーフルな突きを出せるわけである。特に上体の使い方が上手かった。2~3の日本選手も同じような動きを見せたが突きの連打の後の詰めが甘いように見えた。
それからロシアの選手の目を惹いたのは、構えを崩さなかった事である。
先に述べたが、普通近い間合いで動くと胸が前に出がちになる。
これは相手の息、気合をもろに感じる間合いになると、どうしても気負いが前に出てしまい勝ちになるからである。
しかしロシヤの選手は、この試合の駆け引きが上手く、苦しい凌い合いを我慢して、最後まで胸を引き身体全体のタメを生かした足の運びを使っていた。
パワーフルな突きの連打が出せるから当然下段の蹴りもバランスを崩さずに力強く蹴れる。重ねて言うが、上体、胸が前に出てしまうと下半身と上体のバランスが崩れ、身体のタメが消え、突きも蹴りも鋭さが無くなる。
それとロシアの選手の強かったもう一つは、応援に来ている人たちの「ロシア、ロシア、ロシア、・・・」コール、たいしたものだった。

 

相手の癖を読む
相手の得意技、組手の型を読むのも大切な事であると思う。
目についた選手で、48番のキリル・コチュネフ選手試合運びが上手かった。試合時間最後の30秒、判定に持ち込むと、この時間をどうこなすかによって勝者となるか敗者となるか決まる場合が多い。
審判の印象がもっとも強いのは最後の30秒である。そこでコーチのほうから「後30秒」の声がかかる。選手は、ラッシュ、ラッシュに入る。
観客席の応援団も「ワッショイ~ワッショイ」とはじまる。
キリル選手このタイムの使い方、突きの連打から膝蹴り、“イチ、ニ、サン、膝蹴り、~イチ、ニ、サン、膝蹴り”の繰り返しを拍子、リズムよく、無駄なくこなしていた。この動き技が、彼の組手の型である。
4回戦で大沢選手と対戦。大沢選手始めのうちは上手く回り込んで、鋭い突き下段といい試合運びを見せたが、最後の30秒あたりから正面に向かい合うようになり“イチ、ニ、サン、膝蹴り、イチ、ニ、サン、膝蹴り”の動きに嵌まってしまい、負けた。残念だった。
キリル選手は自分の身体の特徴を生かした組手の型を持っている。
それといった鋭さや強烈な技があるように見えないが、勝つための試合運びを持っている。選手のみんなはもう知っていることだと思うが、空手の試合もチェスや詰将棋とある意味では通じる。
実力のある選手ほど、自分の組手の型を持って、相手によって応用をしている。
相手の癖を読み反撃することも自分の空手を大きくすることである。

 

一瞬の隙 獅子は兎を獲る時も決して気を抜かない
もう一人強く印象に残ったロシアの選手はダルメン・サドバォカソフである。
一回戦、二回戦と圧倒的な試合。構えも動きも無駄がなく風格があった。
相手と構え合ったときにすでに勝負が決まっている様な印象を受けた。
盤石なその構えは相手に打つ手がないよう感じさせ、萎縮させていた。
ロシア選手の動きは前に述べたがその代表的な選手がダルメンである。
初日第一回戦最後の試合、左から右、右から左と相手の間合いをコントロールしながら鋭い突きの連打、そこからパワフル下段の蹴り、全く無駄のない試合運び、強烈に印象に残った選手である。
もしかしたら、この選手が優勝するのではないかと隣の席の郷田師範に話すと、なんと全日本優勝者とのことであった。納得である。
この第11回世界大会、選手一人一人の技や動きも印象になり勉強になった。しかし、準決勝でダルメン選手がブルガリやのザハリ・ダミヤノフに一本負けた試合が、一番今大会で心に残った。
それは、私が見た過去の大会で同じような劇的な場面、それも数回、思い起こしてくれたからである。
そこで、その問題の準決勝の試合である。
ちょっと、私がダルメンになって話させてもらう。勝手な想像である。
私の想像はいくらか時差ボケが入ってることを先に断っておく。
相手のザハリ・ダミヤノフなかなかの技が切れる。試合経験豊富な相手である。
構えあう、前に出て間合いを詰めながら、いつもの様にプレシャーをかける。
軽いステップのあと、突き蹴りがとんで来る。受けて相手の気合を図る。
私デルメンは「うん、なかなか鋭い突き、蹴りもパワフル注意しなくてはいけない、よし、だいたい彼の実力が分かった。ヨシ、俺の番だぁ、先、先と攻めよう。突きから得意の右の下段、オッこいつ受けやがった。
よし幾らかフェントをかけるか。オッと、顔面を狙ってく、結構まだスピードがある蹴りだ。ま~そんな蹴りはもらわない。
それ、突きから下段今度は決まった。ヨシ今だぁ、チョット上段にとび後ろ回し蹴りを狙ってみよう。ダミヤノフの突きと蹴りが止まった瞬間を狙おう。
オッ、上手くかわされた。しかし、そろそろダミヤノフ息があがるころだぁ。
ヨシもう少しだぁ、俺の勝利は間違いない。奴の呼吸が荒くなってきた。
口をパクパク開けて呼吸を取っている。もう少しだ。ヨシ、もっとプレシャーをかけるか。突きから下段、上段に時々蹴りを狙って揺さぶる。
今のところ四分六ぐらいで俺の勝利は間違いない。もうこの試合はもらった。
俺もちょっと息があがった。ちょっと奴の動きを見るか。
“ガツン”あっ、頭に衝撃が入った。足の力がスーと消えた。
ヤバイ、アッ、マットに倒れた。優勝するはずだったこの俺がマットに這いつくばってしまった。あー、あそこで一瞬相手を見てしまったからだぁ、アッ旗が4本あがった。立たなければ、でも足に力が入らない。うー、悔しい。
負けたのか。あそこで気合を一瞬ぬいて相手を見たことがいけなかった。

 

ダルメン選手、自分の勝利を試合終了前に信じてしまい、“フッ”と気を緩め、相手を見てしまったようである。
これはどの選手も経験することだと思うが3分、2分気を抜かずに試合をこなさないと、思わぬ技を貰ってしまう。息があがって苦しくなる。相手との技の応酬が一瞬止まる。そこで自分では気が付かないのだが、休んでしまう。
主審の「ヤメー」の声、そこで残心、構えである。
・・・最初に断ったようにこれはあくまでも、ある古希を過ぎた空手家の時差ボケの時の想像である。あまり信じないほうがいいかもしれない。
しかし最後にもう一言、3分、2分、試合時間中は決して気を抜いてはいけない。ガンガン突いて蹴って相手と戦っているのだが、自分とも闘っていることを忘れると倒される。
観戦記スタミナ切れでここで終わる。

 

全空連演武
世界大会最終日に全空連の人の演武があった。
素晴らしかった。稽古の糧が見られて気持ちが良かった。
女性の部門と男性の部門、模範試合。
一本一本の技を試合の流れを止めて、評価して判定するルールでは、一番大切なのは力、パワーではなくスピードである。
もちろん空手の試合であるからには技に力が入っていなくてはいけないことは理解しているが、どちらが大切かというと速さ、スピードである。
だから立ち方、構えも腰の位置がいくらか高めである。
足の運びも両足の足首、膝のバネを活かした弾むような動きを取る。
瞬間的に技を決め又は受けて反撃しなくてはいけないからである。
われわれが言うような半騎馬たちの構えから跳ねるように拍子、リズムを取る。
技を決める瞬間の鋭い大きな気合、東京体育館にこだました。
一発の技に呼吸をのせるから、あの気合が出せる。
極真のルールでは技を実際に当ててダメージを与え、倒す。勿論一発で倒すこともあるが、基本的には技を連続で出さなくては勝てない。
当然呼吸を短く続けなくてはいけない。一発一発の技に大きな気合をかけていたんでは拍子、リズムが遅くなってしまう。
試合の呼吸が、弾むような足の運びから、隙を見て、一瞬の呼吸から飛び込んで技を決める。“先の呼吸”に見えた。
勿論、相手の動きを誘って反撃する、“後の先”の呼吸もこなしていたが、構えも、足の運びもすべて、速さ、スピードを生かすためである。
セーフティーを手や足につけるのも安全性を考えてのことだと思うが、出す技の力、パワーよりも、速さ、スピードを生かした技が大切だからと読めた。

 

最後に空手家の夢、映画 take a chance予告編

 

 

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空手道は文化である。社会の流れの中で発展し衰退する。
現在のようにインターネットや携帯、スマートフォンの檻の中に知らず知らずのうちに、若い人が閉じ込められている時世では、自分を鍛えるために道場で汗を流す人が少なくなった。アメリカでも日本も、空手の道場は子供とおばちゃん、おじさん達が多いようだ。
若い人は痛い思いや苦しい思いをして自分を錬ることをクールと思わなくなったようである。だから社会に気合を入れるために“内弟子INアメリカ”の本を出し、それを映画にしたのである。世界大会最終日の準決勝戦前に会場で上映した。観衆が静かに注目して観ていてくれた。感激である。
いつか公開する予定である乞うご期待。

 

三日間の壮絶な世界大会本当に勉強になった。
今後の私の空手修行の為、じっくりと時間をかけて思い出したい。
松井館長、郷田最高顧問、ありがとう御座いました。

 

健康第一 オス

コメント (0) | 2016/01/11

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