1月12日
快晴である。
早春の陽がさんさんとふりそそぎ、何か気持が昂ぶってくる素晴しい日和である。
カール君と二人でアラバマとフロリダの州境にゴルフ・ショーウというビーチに出かけた。
毎年サマーキャンプで使っているところである。
真白な砂浜である。
砂が粉のように細かいので、歩くたびに「キュッキュッ」と音がする。
内弟子君を連れて行くと必ず手にとって本当に砂かどうか確かめる。
「砂糖か塩か舐めて見なければ判らないぞ・・」
「オス」といって舐めた奴がいた・・・
と言いたいところだが誰も舐めた奴はいない。
ちなみに、私も昔初めてここに来たとき砂を手にとってみた。
真っ白砂浜のビーチまで、私の家からハイウーエイを車で4時間である。
高層ビルが並ぶビーチフロント、我々は生徒のコンドミニアムそれもペントハウスにいる。
あの雑誌のペントハウスではなく、最上階の部屋のことである。
誤解をされては困る、念のため。
カーテンを開ける。視界全体180度、何の障害もなく紺碧の海が見渡される。
私は3回目だが、カール君は初めてである。
バルコニーに出ると眼がランランと輝き一瞬言葉を失ったようである。
「オイ、カール名作を書こう、この海を見ればきっと素晴しいアイデアが浮かぶよ」
カール身体を震わしながら「オス オース」力強い返事がくる。
“ロッキー・ワン”“ダンス・ウィズ・ウルブス“”グラジュエイター“ 負けないぞー!
いいものを書いてサンダス・ムービーフェスティバルで何かの賞をとる。
それと、アカデミー賞にノミネイトされる。
舞台で挨拶をする。何か胸がワクワクする。
「・・・よし気合を入れて前祝いといくか・・?」カール君、なんの迷いも無くスッと冷たいビールを持ってくる。
「最高師範、まだお昼です。」などとは言ないのである。
カール君も深川の先生や練馬の先生と同じ様にビールが好きなのである。
我々は「内弟子INアメリカ」のシナリオを書きにフロリダに来たのである。
しかし海を見た瞬間、喉が渇いたのである。
冬の海は荒れると聴いていたが、眼の前の海は穏やかに陽に照らされてキラキラと輝いている。
夏の海でうるさいほどまとわりついてくるカモメの群れもいない。
変りにペリカンが3羽スーと飛んでいく。大きな口と短い胴、広く大きな翼をグライダーのよう使っているのか風に乗ってスーイスーイと優雅に飛んでいく。
澄んだ青い空に白い雲がまばらに浮かんでいる。
総ての世界が我々を包んでくれるようで気持ちが暖かくなる。
ビールが美味い、スーイスーイと入っていく。
3本飲んだところで、カール君が
「最高師範ソロソロ・・・」
「・・・ン、なんだ」
「始めますか」
「・・・何をだ?」
「・・・・チョット昼寝しますか?」
「・・・そしよう」
何しに此処まで来たのか忘れてしまった。
でも、何か得をしたようで幸福である。
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