7月17日〜20日、アラバマとフロリダの州境にある真っ白いビーチで合宿が行われた。
先生マサ、練馬、ネリマの回蹴りです。
先生ナオイ ボク厄年です。
7月17日〜20日、アラバマとフロリダの州境にある真っ白いビーチで合宿が行われた。
暑い。
真に暑い。
どうしようもなく暑い。
きっと日本も暑いことだろう。
練馬の先生マサも深川の先生ナオイも、暑い暑いと泣きを入れているのでないかと心配している。
しかし、何処でも寝られる不思議な力を持った鈴木師範はきっと昼寝を充分とって元気であろう。 流石、鈴木!
ウーン。そういえば、6月の支部長合宿で私が講話をしているときも隣で涼しい顔して軽い鼾をかき始めた。
思わず打ち首にしようかと思ったが、目の前の一太郎が「最高師範堪えてください・・・」と、目に涙を溜めて訴えている顔を見て耐えた。
しかし鈴木の眠る力は尊敬するというか、もしかして不治の病かもしれない。
おっと、話が脱線してしまった。
これも暑さのせいかもしれない。今日の話はサマーキャンプである。
期間は7月17日から20日まで、場所はアラバマとフロリダの州の境にある太陽が強く
一足ごとに砂の鳴く白くきめの細かい砂粒のオレンジビーチのキャンプである。
マキコ・ナカガワラ。 サンフランシスコは負けない。
スー・カミナカ。 ガハハ・・ヤッター!!
■8月17日の朝9時出発
私の車の中には、東京から来た練馬の先生マサと深川の先生ナオイの二人が特別参加と、それに通いの内弟子カール君と私で4人である。
車が重い。
私とカールみたいに絞っていないのか、二人の先生は何故か顔も身体も丸い。悲劇である。
しかし二人とも私の杞憂など「全く関係ないです!」という顔をしている。
「神様ドウゾ二人の中年の空手マンを救ってやってください」
思わず祈ってしまった。
二人とも激しい稽古に行くという顔ではなく、何か「遠足」に行くような顔である。
ところで「遠足」とは私の子供頃の言葉であるが、今も使っているのだろうか?懐かしいなー!
出発して一時間もたたないうちに隣に座っている先生マサが、
「アッ、師範マクドナルドがありますね・・・」
オイ、ここはアメリカだよ。マクドナルドはアメリカが始まりだよ。
無言でマサを睨み無視をする。
走ること約30分、後ろから、先生ナオイが「アッ、オウー・・・マックがありました」
・・・オイお前たち今朝、コーンフレークを食わしただろうが。
二人とも遠慮なく食べるので、家の愛犬ステラの餌を混ぜて出したら何故か二人とも美味しいオイシイと喜んで食べていたっけ。一体日本で何食っているんだ?
「あ・・・哀れ・・・。人生は厳しい・・・。頑張れマサ、ナオイ。
きっと君達にも花が咲き、いつか真っ白いご飯になめこ汁、鯵の塩焼き、カブ、ナス、キウリのお新香・・・。そんな食事が食べられるときが来るから・・・。
泣けるカワイそうに・・ウッウッ」
車は快晴の中、ハイウェイ65号をオレンジビーチへと進む。
時々何の疑問も悩みもない顔つきの二人を見る。
よく見ると額に「腹減った腹減った!」シワが浮き上がってきた。
あんまり頭にきたので、「オイ、型は何で稽古するんだ?」マサが急に寝た振りをする。
ナオイはタイミングが遅れ、眼をパチパチしながら、「オース、型は形なしです・・?」
バカな冗談をとばす。「ナーヌ!」と睨むと
「師範、アメリカの高速はお金取られないのですか?」と話を逸らしてくる。
どちらかと言うと才能にあまり恵まれず、努力だけで黒帯になりここまで来たこの二人。
空手の深い話をすると何回も同じことを聞き返してきて、こっちも頭が痛くなるので止めにする。
英会話の時間にする。
丁度カールがいるのでABCの歌からはじめる。
これが簡単なようでなかなか難しい。マサは音痴なのでよけい心配したが何とかこなした。私のところに5年もいたのにABCも最後まで唄えなかったら私の顔がつぶれる。
どちらかと言うと我々は、“R“”L“”OU“”TH”等が入ると発音が可笑しくなる。
本当はもっとある。
WALK「ウヮーク」!?歩く。
WORK「ウァーク」!?仕事、労働。
この単語を二人に発音させてみた。
カール君の採点では、二人とも落第である。
暫く車の中は「ウヮーク」と「ウァーク」の合唱になってしまった。
それでも時々「アッ、マクドナルドだぁ!」マサが言うと、後ろからナオイが「本当だぁ」なんと二人で手を叩きながら叫ぶ。
「オイ、鈴木師範。日本の支部長は、大丈夫か?」と思わず心が痛む。
4時間半、無事にビーチフロントのコンドミニアムに着く。
5階の角部屋、バルコニーから真っ白な砂浜、淡いブルーの海。
「東十条の先生!覚えていますか?この海、砂浜!」ナオイが感激して泣き出した。
マサが隣で、「ナオイさん、ボクも泣きました。分かりますその気持ち。
でも早くラーメンつくりましょう、卵二つ入れてあげますから」。
ナオイが「本当ですか?」嬉しそうに眼をしょぼつかせマサと抱き合う。
頭が痛くなってきた。
このサマーキャンプをこなせるのか自信がなくなってきた。
夜8時、生徒が宿泊しているホテルでミーティング。
アラバマのサマーキャンプは皆それぞれホテルに泊まるのである。
それもビーチフロントである。
■8月18日 早朝稽古
起床5時、早朝稽古5時半スタート。
先ずはマラソンである。約3マイル。
全部の人が走るのではなく、腰や膝、どこかに故障がある人は、砂浜を歩く。
このマラソンは、内弟子または元内弟子は必ずトップ10に入らなくてはいけないことになっている。
それと、女性には絶対負けてはいけないこと。
この二つの壁をクリヤーすること。
ところが、である。事件が起きてしまったのである。
トップは通いの内弟子カール君、楽勝であった。
2番は元内弟子先生テツである。
3番目にチョット歳がいってる黒帯のハンス。
その後マサが口から泡を吹き出し、何かに脅えたように丸い顔を三角にして
「フーフーハーハー」いいながらたどり着く。
どうしたのか、と思いマサの後ろを見ると、向日葵のような顔して輝いているマキコ・ナカガワラ女史であった。
サンフランシスコから独りで参加した女性である。
その彼女がニコニコしながら余裕を持って走って来るではないか!
マサの悲壮な顔色が理解できた。
マキコが何か口ずさんでいるので耳を傾けると、
「サンフランシスコ、負けない、サンフランシスコは負けない・・」
と歌うように気合を入れていた。
きっとマサも「練馬ダイコン!ネリマ!練馬、負けたら殺される・・」
と唸って頑張ったのかな?
暫らくして、ナオイが細い眼を更に細くしてパチパチ瞬きながと来る。
眼をパチパチやれば可愛いと思っているのだろうか、困った。
「最高師範、自分いま、厄年なんです」
「君!マラソンと厄年は関係あるの?」
「ハイ、オス、古来から厄年の歳は速く走ってはいけない、人に自分の地位を譲るよう心がけなさい、・・ハイ本当です」
私は思わず朝焼けを見た。
この歳になって、またひとつ大切な勉強をしたと。
ナオイ、頑張ろう!何故かその後投げ技の稽古でナオイをガンガン海水につける。
毎年のことだが、サマーキャンプは朝から晩まで稽古稽古である。
朝5時半から8時まで、10時から12時まで、午後2時半から5時まで、総て私が指導する。
一度家内が「あなた、サマーキャンプはいいわねー。朝チョット汗かいて、ビール飲んで朝寝して。ビーチで可愛い女の子などを盗み見て、夕方またチョット汗掻いて・・・本当にいいわねー!」
そこで息子ザックと家内を一度参加させた。
夜明け前から稽古が始まり、日が沈むまで汗をかき通したことにより、正座して「申し訳ありませんでした」と家内が謝ったとか。
いや、うちのワイフが謝るわけナイナ!いかん、いかん、そんな甘いこと考えては。
とにかく稽古に徹する訳です。
マサもナオイも鈍いから私の気持ちが通じるわけないなぁ。
■8月19日 早朝稽古
早朝5時のビーチはまだ夜のなごりを残している。
海は今日も穏やかに波打ち、微かな柔かい明かりを掲げて月が西方残っている。
マサとナオイの大嫌いなマラソンである。
昨晩、食事時に何の反省もなくバクバク野菜炒めを食べ、ガバガバとビールを飲んでいた二人を見ていたら殺気が出てきてしまった。
そこは武道家、すぐ反省したのだが
「明日の朝のマラソンは1位から3位まで君達が占めること。もしも遅れをとったならばビール無し!」と悪たれ口をついてしまった。
マサもナオイも聴く耳を持たないような顔つきをしていた。
話が前後して、書いてる私もなにを書いているか分からなくなって来てしまった。
スミマセン、我慢して読んでください。もうすぐ終ります。
朝のマラソンです。
アトランタ、あの有名なマーガレット・ミチェル著の「風と共に去りぬ」レットバトラー、スカーレット。
話がちょっと逸れますが、私の学生時代にこの映画を見たのです。
丁度彼女に振られた時でした。
殆ど振られていたので相手が誰だったか思い出せないのだが結構落ち込んでいた時でした。
スカーレット役のビビアン・リーという女優の美しさに魅入られて、周りの女性が全部ブスに見えました。
それほど強烈に感じました。
そのとき、「待ってろよ、今アメリカに行くからな!」
ナーンて、思ったのかどうか、覚えていません。
話を戻します。
そのアトランタの支部長が元内弟子の高橋督先生なのですが、今回のサマーキャンプは何か理由を付けて逃げてしまいました。
代わりに代表として、スー・カミナカという女性が出席しました。
二児の母とのことです。
砂浜を走るときは充分時間をかけてストレッチをしなくてはいけません。
ストレッチが終わって、「ハーイ出発」と言うと、一人だけ、バーッと跳び出すように走り出した人がいました。
皆が、エッ!と思ったときには100メートルほど先を走っていました。
それが、スー女史だったのです。
結論から言いますと、元内弟子全員コテンコテンに遅れてしまったのです。
それでも流石、現役の通いの内弟子カール君がトップでした。
2位にスー、マサ先生は5〜6位。ナオイ先生は10位ぐらいだったと思います。
毎年トップを争っていた先生テツが3位と遅れてしまったのには驚きました。
スーに朝の稽古が終わった後、「スゴイネー君は」と声を掛けると、
「2年前、センセイ鉄に負けたので今日は必ず復讐すると気合を入れました。」
一瞬スー女史の顔とトラ鮫の顔が重なった。
オット!三歩さがって構えてしまった。
先生テツのサムライ顔が、梅干とレモンをいっぺんにかじったような皺くちゃな顔になってしまった。腹でも切るのではないかと心配した。
鉄が「実は、最高師範・・」
「鉄センセイ、何も言うな・・」
「オス、オース」
「オマエも厄年なんだろう?」
「分かりますか!」
ナオイ先生が「・・・でしょう!そうなんですよ最高師範!」
殺気がまた出て来てしまったがオスの二文字で耐えた。
朝飯のとき、二人とも泣いているのでは、と思ったのだが、すっきりした顔で
「イヤー、速かった。それにしても朝のビールは美味しいですね直井さん」
「全く、2日続けてマキコ女史に負けてしまいましたよ。ハハハ、なんですかあの、スーという人は。スーパーウーマンですね。何食っているんですかね!」
・・・私は何も言わず、コバルトブルーの静かな海を見つめながら、まだまだ頑張らなくては・・・と決心しました。
早朝稽古は、走った後に波の音を聞きながら黙想である。
黙想が終わる頃、朝陽が輝きを増し、ビーチは一変する。
帯ごとに別れ、それぞれの課題に汗を流す。
後は飛び蹴り、特にドロップキック(胴回しカカト落とし)を波打ち際でこなし、最後は受けからの投げ技、突き打ち技からの投げ技等を主に稽古する。
ヌンチャク、棒などの武具も稽古する。
明け方、オレンジビーチにはPINという名の小魚が群れをなして浜に来る。
それを追ってイルカ(ドルフィン)が寄ってくる。
時々手の届くところまでくる。
汗を流しているときは、苦しかったりきつく感じていたりするのだが、終わってしまうと、大自然の中で鍛えた確かな余韻が心身を包む。
空手万歳、サマーキャンプ万歳!である。
PS:
実は先生マサは右足の腿に肉離れ、先生ナオイは風邪、本当です。
それと、先生鉄は前の晩カレーライスの食い過ぎと言う噂があったが、真偽のほどは確かではない。念のため。
朝から晩まで、稽古稽古。 サマーキャンプ 万歳!
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