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国際大山空手道連盟 WORLD OYAMA KARATE ORGANIZATION

映画奮戦記第四弾

春の華やかなサクラやアゼリヤの花が散った後に、初夏の花、泰山木の花が咲く。
濃い緑の大きめの葉の中に埋もれる様に白い花を咲かせる。
風がたっと甘い香りを振りまいてくる。
アラバマの初夏はまだまだ凌ぎやすい。

 

6月21日に日本に出発する。支部長合宿である。
皆の元気な顔を見ながらサイの基本、型を指導する。約1週間滞在して帰る。
東京から帰ってくると、アラバマはすっかり夏になっていた。
毎日どのチャンネルもニュースで各地での猛暑を流している。
撮影が終わってホッとしている。

 

そこで映画奮戦記第四弾である。

 


撮影3日目 5月8日
道場での各シーン、特にシンシヤがマサをKOする場面ウソにならない様になんかいもやり直す。
回し蹴りの角度がどうしても甘い、蹴り足の膝を何回もシンシヤ役のキャシーに注意をする。私の声が段々ときつくなる。
カメラマンもプロデューサ―のスカットもはらはらした顔付で私を見ている。
時間がかかり過ぎる。8回でOKを出す。

 

4日目 5月9日 グロスリーストア。コヒーショプ。

 

5日目 5月10日 アントニオのアパートで撮影。
シンシヤとの会話、ワズガイのアントニオが優し過ぎる。キミ―、パワーレンンジャーか何だか知らないが、もっとなまいきな感じを出すように・・注文付ける。

 

アントニオに横恋慕、モーションをかけるジェシカの登場。
ジェシカ役の舞台俳優名前を忘れたが、この人がもの凄い妖艶な美女で色気をプンプン撒き散らしていた。
スタッフも内弟子君達も皆期待をしていたのだが、何とほかの舞台の大きな役が突然決まりジェシカ役を降りた。{すぐ代役は見つかったが天と地の差が有った}
余談だが、オーデションの時皆の意見が一発で決まったのはこの人だけであった。
これは秘密にしておいたのだがマサ先生や斉藤先生、直井先生、特にアトランタの高橋先生に見せたかった。先生達がどんなリアクションをするか見たかったのである。
運命は過酷である。なんか話がオカシクなった。
イケナイ本題に戻る。
ロケが夕方道場の裏パーキング場に移る。
この映画最後の方のヤマ場、マサが愛の告白をするシーン、シンシヤがそれに答える場面。保守的なスカットはキスなし、抱擁だけにした方がいいと注文付けて来た。
理由は歳が若すぎるからと言う。
カメラデレクタ―のドレイクはキスをすべきだと意見が分かれる。

 

私は“ブチュー、ブチュー”とキスをすべきだと強く主張する。
今の若い者は進んでるのである。
「ただ眼を見つめあって抱擁だけでは世界の若者が納得しない・・・」とか何とか言った。だけど本当は、みんな野次馬根性で見たかっただけであるかも知れない。
星空の下、二人のキスシーン真に迫っていた。青春は素晴らしい。

 

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「フーン俺も昔、恋をしたことが有ったなぁ・・・」バカみたいな感傷にふけった。
思わず見とれてしまった。乞うご期待である。

 

6日目 五月11日 大会シーン。

 

7日目 5月12日 同じく大会のシーン。
「予定は未定にして確定にあらず」とは良く言ったものである。苦しく、難しかったが何とか終わらせる。

 

8日目 5月13日 エヤポートシーン。 
主人公のマサが初めてアラバマに着くときと、内弟子寮から逃げるときのシーンである。バーミンガハムのエヤポートもいろいろな航空会社が入っている。
プロデューサ―のスカットが何度も足を運びエヤポートの許可をやっと取った。
どこも最後はお金がものを言う。
貴重で僅かな時間である。一秒、一分が勝負である。
寮長の力男がマサを初めて迎える。「歓迎高橋マサ太郎」と書いたポスターを持って混雑するロビーで迎えるシーン。
アシスタントのマイクルが突然力男に「オゥよく来たな―マサ」と言って、抱けとアドバイスをする。私がカメラの後ろにいたので聞えなかった。
エキストラと本当の乗客が入り混じるロビー「アクション」の合図を出す。
マサが自分の名前を書いたポスターをみつけ、力男のところに駆け寄る。
力男が懐かしそうに「オゥーよく来たなマサ」とマサを抱く。
私が「バカ野郎お前は内弟子だよ、日本人だぞ、なんで生まれて初めて会う奴にお前が抱きつくんだ・・・まさか、お前!?」
力男役のオオダテ、「あのーマイクルから・・・アドバイスが有りました。」
「お前ねー俺が監督だよ、俺だけの言うことを聞くの、時間がないんだよ!やり直し!」マイクルを捕まえて回し蹴りでも頭にくらわしてやろうかと思いったが逃げられた。
もう一つ3人がマサを捕まえるため、内弟子のトラックで駆けつけるシーン。
カールが運転していたのだが、急ぎ過ぎて完全に止めずにトラックから飛び降りてロビーに駆け込んでしまい、無人のトラックがそのまま走りだしあわてた。
カールがトラックを追いかけるハプニングがあった。
笑いごとではなくこっちは心臓が止まるかと思った。みんな真剣に協力してもらいたい。本当毎日が壮絶な戦いである。

 

5月16日 撮影11日目 内弟子寮での撮影に入る。
秋刀魚の頭を食べるシーン、アトランタの高橋先生が見つけてくれて持って来てくれた。ところが秋刀魚が5匹しかない、失敗は許されないのである。一発勝負である。
何回もリハーサルを繰り返し「ハーイ アクション」となった。
皆が猛列にガツガツ食べ始めた。特に秋刀魚を両手で持ち頭の方からかじった。
それも口を大きく開けて食べるので秋刀魚の頭がグシャグシャになるのが見えて仕舞った。
最初は面白かったのだが、チョットやり過ぎなのでは・・・と言う感じである。

 

私の出番、マサにお説教するシーン、何となく感情を入れるのに苦労した。
役者も大変だとつくづく思った。
後マサが心を入れ替えて「・・・頑張ります」と他の3人の内弟子に言うシーン。
本当のマサ先生、斉藤先生、それにカール、3人が帰ってくる。
ドアを開けて入ってくるのだが先頭のマサ先生と斉藤先生、カールが右、左、右、左と足をそろえて行進して入ってきた。
勿論私は叫んだ「カット、オイ運動会じゃないんだよ、イチニ、イチニで入ってきたらコメデ―になっちゃうよ、オイ練馬の大根役者!映画は アート、芸術なんだよ!」
しかし面白かった。みんな爆笑である。

 

5月17日 撮影12日目 内弟子寮の各シーン。
最後は裏庭で力男がマサを説得するシーン。{本の中では力男は森である}
静かな夜、月明り、そんな世界に力男とマサがうまく溶け込んでいる。
しばしサイレント、二人とも黙して夜空を見いっている。
このシーンは、アントニオにコケにされたマサ、心の中で悔しさが煮えたぎっている。
しかし戦っていく勇気が出てこない。その気持ちを力男が静かに諭していく。
誰もが似たような経験があるのではないか。
寮長役のオオダテ流石プロの役者だけあって泣かせた。
台詞は日本語であったが。スタッフが終わった後涙を浮かべていた。
この映画のヤマ場である。

 

5月18日 撮影13日目 スケジュール遅れている。予算もオバーである。
頭が痛い、それでも前に前に進まなくてはいけない。
とにかく終わらせなくてはいけない。
予算と時間の都合で、省略した場面もあったがもう少しである。自分に言い聞かせる。
借りた内弟子寮、夜の10時までしか使えない。とうに過ぎて仕舞った。
理解ある家主でよかった全ての内弟子寮のシーンが終わったのが真夜中の12時半を過ぎて仕舞った。とにかく今日も何とかこなした。

 

5月19日 撮影14日目 ガスステーション。トラックの中、力男とマサの会話。
ドクターがマサを診察する。マサが試合中に金的を蹴られて、その部分が?が将来使えるか否か!の診断である。
力男が「ドクター、まだ使えますか!?」笑いごとではありません。もの凄く真剣です。
ドクターは私の黒帯で本当の医者なのだが、大勢のスタッフ、カメラや照明、その他機具に囲まれての演技、あがってしまった。いつものように何回もやり直しが続く。

 

自分の頭の中にあるシーンと現実のシーンではそれなりのギャップが生まれる。
僅かな費用と{私にとっては莫大である}限られた時間、妥協しないと終わらない。
とにかくやり遂げないといけない…自分に言い聞かせる。

 

5月20日マサ先生と斉藤先生が帰る。
二人とも自分の道場を2週間以上も休んで協力してくれた。特に斉藤先生は女の子が生まれたばかりであった。深く感謝である。

 

5月21日 撮影15日最後の日である。
本当は日本に行って撮影する予定であった。「内弟子INアメリカ」の本を書いた時、郷田師範の後援者のお店、西日暮里の駅の下にある居酒屋「喜多八」を頭においてあった。
オーナーの太田さん素晴らしい人である。日本に行く時は先ず「喜多八」による。
成田着いた時から喉と、腹が「喜多八、キタハチ、」って囁く。
極真会の連中、特に郷田師範が良く使うが、我々も時々ミーティングをやる。
マサ先生、直井先生、石川先生や原田先生も良く参加する。旨くて安いのである。
私がいくとメニュにない海の幸や鍋物が出てくる。店はいつも満員である。
この映画もそこで撮る予定であった。
残念ながら予算の関係でアトランタの日本レストラン早川で撮影することになった。
高橋先生やレストランオナーの早川さんの友人がエキストラになって協力してくれた。
日本の感じがだせて良かった。感謝である。

 

夜はマサが父親に「アメリカに行って鍛えて来い、内弟子になれ!」説教をされるシーン。高橋先生の生徒の豪邸を借りる。
このシーンが最後の場面である。
この時を皆、私も含めて待っていたのである。
予定は8時には終わることになっていた。
カメラデレクタ―のドレイクの強い希望で、何故か、雨を降らすことになる。
窓に降りかかる雨、部屋のライト、マサと父親、渋いシーンである。
しかし時間がドンドン過ぎる。何だかんだで終わったのが夜中の1時半である。
この2~3日睡眠時間は3~4時間である。
プロデュサーのスカット隣の部屋でグゥグゥ寝ていた。
こちらは監督なので全てに立ちあう。肉体的にも精神的にも限界であった
心臓がパクパクしてくる。
何とか終わった時は思わず叫んだ。 WRAP!!{FINISHの意味}
周りを見るとパートナーのスカットも起きていた。
思わず抱き合った。
高橋先生が心配して「最高師範泊まって行きますか?」と聞いてきたが、明日朝千葉さんと息子のマッケン君がバーミンガハムから日本に立つので帰ることにした。

 

本を書く、シナリオを書く、出演、監督、資金を集める。いろいろ有った。
夜中一人で運転しながら自分でも良く頑張ったと思った。
とにかく撮影は終わった。
映画自体が終わった訳ではないが、一つの大きな山を越えた気がする。

 

外は雷雨である。激しい雨が車を叩きつける。
ときどき暗い闇の中、閃光が走る。
もし事故があって死んでも本望だと思った
しかし、まだまだヤルことが沢山ある。
今死んでたまるか!冗談じゃない、まだまだ気合いを入れていこう。
古希、だからどうしたんだ!70歳まだまだ若い。青春だぁ!
もっと、もっとやってやる。
眠気が襲う、眠らないように歌う。音痴でも歌えるのである。

 

走れる時に走る。跳べる時に跳ぶ。
カラテに嘘が有ってはいけない。稽古に嘘が有ってはいけない。
ワールド大山空手これからも走り続ける。
乞うご期待!

コメント (2) | 2012/07/24

エッセイ

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“映画奮戦記第四弾”へのコメント (2)

  1. 押忍、この映画や小説から
    多くの人が挫折から立ち上がり、前に進んで行く勇気を共感でき、
    自身もが前に進むキッカケになれば素晴らしいです。
    決して誰もが大成功するわけではないでしょうが、
    前に出る勇気は常に養いたいです!押忍!

    from 原田(2012/07/24)
  2. 最高師範の奮闘ぶりに脱帽です。映画の成功をお祈りします。押忍

    from 藤井 嘉文(2012/07/24)

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