8月になった。まだまだ残暑が厳しい。
バーミンガハムには百日紅の木がいたるところにある。
街路樹や庭先に白や赤、ピンク、紫色の花が細い枝先に群れをなして咲いている。
6月の初めごろから勢いよく咲き始める。
やはり8月になると心なしか花の勢いが落ちてきている様に見える。
灼熱の陽に照らされて疲れたのかもしれない。
今年もあと半分である。
4月ロシヤから帰ってすぐに5月アメリカンカップ。6月はサンフラシスコでファイターズカップ。両大会とも成功内に終わってホッとする。
その後6月中旬に日本で支部長合宿。久し振り皆と一緒にいい汗を流す。
合宿最後の夜は映画「TAKE A CHANCE」ファーストカット1時間7分を見せる。
大幹部の直井先生が見終わった後「自分も出演したかったです」と言ってきた。
最初から内弟子役に先生マサ、先生斉藤、先生直井を予定していた。
オーデションの時三人に台本を読みながら内弟子の役を演じさした。
マサと斉藤はそれなりに真剣に演じ良かった。
だが直井は最初から逃げで、台詞を小学生の様な棒読で演じた。
思わず私が脚本で頭を5回ぐらい叩いてしまった。
そんな事情なのにいまさら出演したいとは深川の大根役者、遅すぎる。
マサや斉藤が役をこなしているのを見て自分も出来ると思ったのかもしれない。
何か自分のプロマイド写真も用意するとか・・・良く顔をもう一度鏡で見ると言い。
世の中そんなに甘くない。
しかし直井の顔は見れば見るほど味がある。
気合だー!
6月の末、日本から帰って来て丁度時差も取れた或る日の午後、家人が「お話があります」と来た。
勿論私は「ハイ、なんで御座いますか?」と警戒しながら答える。
家人は澄ました顔で話し始めた。「ケン{長女エリカの旦那}がTVの撮影で7月から8月中旬まで、ノースキャロライナに行きます。エリカは今売れてTVの脚本1本と映画の脚本2本今秋までに書き挙げなければいけません。そこでこの7月孫を連れて我が家に来ます。貴方と私で孫の世話をします」その表情には確固たる意志が表れていました。 しかしなにも抵抗しないで言いなりになるのは男の意地が許さない。
丹田に気合いを入れて「あの~ですね、サマーキャンプがあり日本からマサと直井が来るのですが・・・」
家人は顔色も変えず「二人はガレージ アパートに留めます、貴方が綺麗に掃除をしなさい、エヤ~も入っています。ホテルよりはマシです」
私がそれでも食い下がり「あのう~」と言いかけた。
そこを家人が「マサも直井も武道家です。裏庭にテント張って合宿しても良いではありませんか?厳しく行きましょう、厳しく!」
凄かった。モジモジしている私を冷やかに見つめながら家人が「もう決めたことです。いいですか、ハリウッドの仕事は浮き沈みが激しいのですチャンスがあった時に掴まないといけないのです。今エリカとケンは波に乗っています。貴方が何時も言っているではありませんか、チャンスは逃がすな・・・等と」
仕方なく直井の得意な台詞「ハイ、頑張ります」と答えた。
と言う訳で、LAから娘が孫二人を連れて7月いっぱい我が家に滞在することになった。孫のラウリー{RILEY}は6歳、ルビー{RUBY}は4歳。私は孫とは一年に多くて2~3回だけ会う。
家人は一カ月置きにLAに会いに行く。私より孫の方が大事の様である。
思うに僅かな時間過ごすから眼に入れても痛くないほど可愛いのだと思う。
これが毎日朝から晩まで世話しろとなると別問題である。
私のベットルームも取られ、二階の息子ザックの部屋に追いやられてしまう。
はては朝から食事当番、当然皿洗い。次に動物園、博物館、公園、プール、ゲームこれがまったく解らない孫に怒られながらなんとかこなす。
チェスをして負かすと涙が溢れて来る。家人が眼の色を変えてとんでくる。
娘が目を吊り上げて睨んでくる。
「君達、勝負は厳しくやらないと・・・」等と言ったら大変である。
好きなTV番組も当然見られない。見るのはデズニ―チャンネルである。
ルビーが機嫌が良いとぬいぐるみの人形を一つ私に持たし隣で座ってみろと言う。
拷問である。逆らうと犬小屋か裏庭でテント生活である。
そんな生活の中、日本から先生マサと先生直井が到着した。
直に家から逃げるようにサマーキャンプに出発した。
サンフラシスコから斉藤先生やアトランタの高橋師範、も参加してロシヤ遠征の同窓会になった。サンホゼからも福西先生も加わり一騎当千のサムライに囲まれたのである。
ところが残念ながら指導は私が担当になる。
後列:左から最高師範、高橋師範
前列:左から福西先生、斉藤先生、カール先生、マサ先生、直井先生
今回のテーマは棒である。
棒の基本、棒の持ち方、振り、打ち、突き、受け。
上段、下段、青眼の構え。その構えからどんな基本の技が自然に出せるか。
立ち、足の運び。型、約束組手。
稽古前並んだサムライの顔付は渋くなかなか絵になっていた。
しかし棒を使わすとなんか自信がなくなって、オジサンの顔になってしまった。
それでも最終日の稽古ではビシビシ振って突いて気合いが入っていた。
やはりサムライだった。
サヨナラパーテイでは「TAKE A CHANCE」のファーストカットを見せる。
無事サマーキャンプを終わらせる。マサと直井を連れて家に戻る。
最後の日だからステーキを焼けと二人に脅かされる。大変な夏である。
人の気も知らないでバクバク食べてガバガバビールを飲んでいた。
孫の希望でその晩、家の中で電気を消してHIDE&SEEK{隠れん坊}する。
娘、家人、直井とマサ勿論私も参加して全員である。
直井がクローゼ{押入れ}の中で家人のコートをかけて隠れる。
それを見て家人が涙を流して笑い出した。
直井は誰にでも愛される様だぁ、凄い特技を持っている。
ある意味では尊敬してしまう。ホント!
マサも直井も次の日晴々とした顔付で帰っていった。
私が作った特製のサンドイッチも忘れずに持っていった。
私とワイフでまた孫の世話である。
まるで強化合宿のようである。「押忍」の二文字で気合いを入れる。
疲れた顔や泣きの入った顔を見せると家人、女帝の叱咤が容赦なしに飛んでくる。
道場の指導もヘトヘトである。
石に噛り付く様な毎日であったが何とかこなす。
8月1日昼に娘の旦那ケンそれに家人も付き添って全員ノースキャロライナに出発した。
家人は8月中旬まで孫の世話をするようである。凄い、女性は歳を重ねる度にドンドン強くなってくる。これは真実である。
家は私と愛犬ステラとハナだけになった。
フリーダム「FREEDOM」思わず叫んで、ステラとハナと抱き合って自由を喜び合った。
失われた私のベットの上で手脚を大きく伸ばし「エ~イ」と気合が出た。
次の朝、コヒ―を飲みながら寛いで好きなニュースを見る。
ステラとハナが庭から熱い視線を送ってくる。散歩の時間である。
ヨシと気合を入れて着替える。
散歩のコースTRAILは4つある。
家から直接出るコース、あとは車で2~3分のところからスタートするトレイルである。今日は車で出るコースを選ぶ。
映画の撮影の時、郷田師範が走った小路である。
車を止めて外に出ると、ムットする暑さが身体を包む。
歩きだすと雑草や芝を刈った後のツーンとする草の匂いがする。
夏の匂いである。
この暑さと、ツーンと鼻に来る草の匂いが、遠い昔の夏を運んできた。
・・・麦わら帽子をかぶりモチ竿を持って油蝉を探し回った夏。
小さい池のまわりをス―イ、ス―イと豪快に飛んでいた鬼ヤンマ、銀ヤンマ。
胸を踊らして見いっていた夏。
5円か10円だったと思うアイスキャンデーをだいじに齧りながら遊んだあの夏。
夏の匂いは特別である。
散歩の小路には雑木林がところどころにある。
松と落葉樹の間を小路が蛇行する。
林の中を歩く、夏を惜しむように蝉しぐれが身体を包む。
なんとなく孫や娘、娘の旦那、家人を思い出す。
今頃どうしているのかな~と。
左からルビーちゃん、最高師範、ラウリー君
孫のラウリ―とルビーが大人になって何かの拍子に、アラバマで過ごしたこの夏を思い出してくれるかな・・・・と心に浮かんだ。
グランドパー{GRANDPA}とグランマー{GRANDMA}と一緒に遊んだアラバマの夏。
自然と心が温かくなった。
家族は素晴らしものである。
オス
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オス!
from 大山 努(2013/08/25)お疲れ様です! 嵐のような夏みたいでしたね。大変だったでしょうが師範のイヤイヤながら嬉しそうな好好爺さん顔が思い浮かびます。
Enjoy while you can!!!
オス!
いつも心待ちしてます。ギンヤンマ、オニヤンマ、郷愁を誘ってくれますね。
from 東の忠(2013/08/30)また良い弟子に囲まれて最高師範、本当に最高ですね。
最高師範からのメッセージです。
努プロ
がんばってください。
from Shihan T(2013/09/12)活躍を期待しております。
東の忠さん
最高師範曰く
from Shihan T(2013/09/12)「実際にサムライたちと一緒にいると頭痛薬が手放せない」
そうです。
アトランタオリンピックの年に、私たちはワニAワニBに会いたく5名で最高師範のところにお邪魔しました。バ-ミンガムからフロリダの目的地まで350km~400kmあるそうです。
from 東の忠(2013/09/13)行きも帰りも最高師範が運転してくれました。くくく本当に楽しかったです。
最終日は最高師範の自宅でバ-ベキュウでした。最高師範が料理してくれたあのステ-キ本当に最高でした。あの思い出は生涯忘れないです。