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国際大山空手道連盟 WORLD OYAMA KARATE ORGANIZATION

道場物語 第一話 チャレンジカップ

道場と言葉に出して言うと、何か古い感じがする。
でも日本の歴史と言うか世界に誇れる文化の響きが快く感じられる。
道場にはいろいろな人、老若男女が汗を流している。
そして、それぞれ入門する動機は異なるようである。異なる動機の背景には、その人の苦しみ、喜び、それぞれの葛藤があるようである。
汗を流し自分を見つめチャレンジして心の葛藤を乗り越えていく。
道場には今日から明日へと大きく羽ばたく人の汗が流れている。
人それぞれの汗にはその人だけの、物語がある。

 

 

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第一話 チャレンジカップ

 

僕の名前は小島康隆。現在某高校の2年生、昼休み教室から青空を見ていたら、なんとなくカラテの道場に入門した最初の日、それから最初に大会に出た事を思い出した。

 


・・・あの時は僕が小学校4年になった時だった。そう4年生なった春、僕は風邪をひいてしまい、学校を一週間休んでしまった。
お医者のバカがこの子は体力がないので何か運動をすると良いと、僕のお母さんにアドバイスをした。
「よけいなことを言うな」と思ったのですが遅かった。
アチコチとお母さんは調べた様ですが近所の空手道場に入門させられてしまった。
カラテ、なんとなく古いと言うか、ダサイと言うかなんか気が乗らなかった。
サッカーとか野球とかもっと人気のあるスポーツが良かったような気がするが、僕は走るのが苦手だった。
それにサッカーも野球も朝から晩まで先輩達にしごかれ、こき使われるだけな気がした。
きっと入部したら、ベンチでその他大勢の新入生と「ウレー、オーイー、オレー」など声を出すだけで、ボールや球など僕はきっと触れないかもしれないと思う。
もし触れた時は球の掃除、ボールを磨かされるぐらいできっと終わりなのかもしれない。
・・・そんな事をお母さんと話しあって結局カラテの道場に入門した。

 

 

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入門最初の稽古、テル先生が「オレーオレー・・・ハーイ、右足前三戦立ち~」とか何とか号令をかける。僕を含めてビギナークラス{白帯}は17人ぐらいいた。
殆どの子が僕と同じぐらいの小学校3年生か4年生ぐらいに見えた。でも中にはもっと小さい子やもっと大きい子もいた。
先生が次に「正拳中段突き」と叫ぶ様に号令をかける。みんなも合唱するように「正拳中段突き~」と答える。
僕はただ口をちょっと開けて誤魔化した。
先生がまた「それ~気合」と怒鳴る。「エイ、ヤァー、エイ~」と気合を入れる。
先生の目線が忙しくあっちにこっちに動いている。僕は出来るだけ目線を合わせないようにして正拳突きをした。
先生が「両膝をもっと絞めるように落とせ、膝が伸びているぞー、突きの力は足からくるんだ・・・ホレホレ」なんかテル先生は気合の塊のような人に見えた。
学校の先生より恐い感じがする。先生に睨まれると身体が金縛りにあったように硬くなる。なんとか頑張らないといけないと思った。

 

 

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手技が終わって、蹴りの稽古になった。僕はもう「フーフーハーハー」で、疲れて座りたかったが、テル先生の顔がなんか睨んでるようで、恐かった。しょうがなく頑張った。
前蹴上げから始り、回し蹴りまで続ける。
テル先生が玉子みたいな顔の中の小さい眼を大きく見開いて「いいかー、よく聞けよ、蹴りは上体のリードで蹴るんだ。両手、両肩頭柔らかく鋭く使うんだアァ!」なんだか解らないが、なんとなく身体が分かったような感じがする。

 

道場には週2回通う事になった。あっと言う間に2ヶ月が過ぎた。なんとなく正拳も回し蹴りも出来るようになった。
色帯のクラスにタケシがいた。タケシは僕と同じ学校で同じクラスだった。何時も先生に怒られて廊下に立たされている奴だ。
でも勉強は余り出来ないようだが体育の時間になるとがぜん元気になるタイプ。喧嘩も強かった。
タケシはブルーベルトを締めていた。道所の稽古ではタケシは学校にいる時より元気いっぱいの様に見えた。

 

 

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6月になってテル先生が「チャレンジカップという大会がある。みんな参加する様に」と稽古の始める前に発表した。なんとなく嫌な予感がした。
ポスターを稽古の後に渡されて「何所かに貼るように」と恐い顔で言ってきた。
僕はただ「オス」と返事をする。
それから先生が道場内に大会のポスターをべたべた貼りだした。正面の鏡の前にも左右の壁にも3枚並んで張った。なんとなく気分が重い。僕は自信がない。
みんな大会の事でエキサイトしているがなんとなく道場に行くのがいやだぁ。昨日は学校の宿題がると言ってお母さんに道場を行くのをサボった。ちょっと良心が痛んだが仕方がない。
でも明日はきっと道場に行かされる。お母さんは僕の心の中を知っているようだ。なんとなくそう思う。
学校の帰りテル先生から僕の携帯にメールが来る。今日は道場に必ず来る事、逃げるな!・・・なんかテル先生も僕が逃げている事知っている様な気がする。ヤバイ!

 

 

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大会には出たくなかったが、お母さんに「出なかったらゲーム一ヶ月なし」って宣告されてしまった。
それに根性を顔に書いてあるようなテル先生に「何でも経験だぁヤスタカいけー」
と言う訳でビキナー白帯・青帯のディビジョンにエントリーである。
大会当日、朝から腹の調子が悪い。お母さんに「腹が・・・」と出たら。
「気合、気合」で終わりである。
僕の気持も知らないで、試合をするのは僕なんだから!
僕のデビジョンには16人いた。顔中筋肉マンの様な顔に眼鏡をかけた直井先生が組み合わせをした。マットを挟んで座らせられる。
自分の順番を待つ間、胸がドキドキして困った。マットの向こう側にいる僕の相手がチラチラとみている。なんとなく険しい顔付き。目線が合うのが怖い。
最初の試合は同じ道場からのタケシだった。試合前から進撃の巨人みたいな顔付で相手を睨んでいる。
相手の子が可哀そうだ。試合はタケシが突いて蹴って追いかけ回していた。
タケシの奴相変わらず強い。相手の子が泣きだした。相手側の女の人、きっとあの子の母親かもしれない。「泣くなぁーツトム、気合を入れていけ!」怒鳴っている。凄い。
僕のお母さんも、怒鳴るのかなー、いやだなー。心配だ。タケシは学校でも喧嘩をして負けた事がない。
前にも言ったが勉強は全く駄目だが体育の時間は目立っている。
試合終了。タケシの勝ち。いよいよ僕の番。

 

 

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脚が金縛りみたになって動かない、どうしたんだ。名前を呼ばれたが立てない。
テル先生が僕の道着の襟首を持って立たしてくれた。
先生のピーナツみたいな顔が目の前にある。
「ヤスタカ気合を入れろ、いいか右の下段、左と右の突き、一発突かれたら二発返せ、」
「オス」とやっと返事をする。
向かい合う。相手がドンドン大きくなるような気がする。
ヤバイ。身体が金縛りにあったみたいに動かない。
主審の「お互いに礼」声が遠くで言っている。耳鳴りがする。
どうしよう、「はじめ」あっ!なんか顔にバットが当ったような気がする。
目の前が真っ暗になった。「ガァーンガァーン」と頭が揺れる。
僕はマットに倒れていた。
遠くの方で誰かが「ヤスタカ~、ヤスタカ~」と僕の名前を呼んでいる。眼を開けるとお母さんの顔が目の前にあった。

 

これが僕のデビュー戦。時間して一秒もかからないで負けてしまいました。
僕のディビジョンではタケシが一位になった。
タケシが大会が終わってから僕にあぐらをかいた大きな鼻をめいっぱい膨らまし、秋の全日本頑張れと言ってきた。
その晩、お母さんが涙ぐんで「ヤスタカ頑張ったね、お母さんは大会に出てくれたので嬉しい」と僕に言ってくれた。
お母さんの言葉を聞いて初めて悔しさが出て来た。
布団に入って、このままでは終わらせないと、思った。
強くなりたいと思った。
ヨシ気合を入れて稽古しようと本当に思った。
・・・あれから結構マジに稽古した。

 

第一話 終わり

コメント (0) | 2015/01/20

内弟子 in America,道場物語

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