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国際大山空手道連盟 WORLD OYAMA KARATE ORGANIZATION

第二話 器用と不器用 広く浅く、狭く深く?

俺の名前は寺田信吾、現在中学2年生である。
勉強、スポーツ万能、イケメンである。
顔はたまご型、眼は細いが「優しい感じがする・・」って女の子が騒ぐ。
髪の毛はもちろん長髪、ナチュラルなウエーブかかっている。
ときどき女の子が触ってきて、うるさくて困る。

 

ワールド大山空手、練馬道場に入門して約一年弱ぐらいになる。
きっかけは同じクラスの、鈍い松木勇太郎に誘われたからである。
勇太郎には悪いが、彼は何やっても遅いと言うか、鈍いと言うか・・とにかくダサイ、クールじゃない、ようするに格好がよくない奴なんだ。
そんな勇太郎が昼休に前屈立ちとか正拳だとか格好つけて見せるんだぁ。
それじゃー俺もちょっとやって見返してやろう~かと思って始めた訳。

 

 

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俺が入門した時、勇太郎は既に黄色帯だった。なんだかわからないが、恰好つけてオレに「あーだ、こーだ」とノウガキをたれて来た。
すぐに勇太郎には追い付く自信があった。
3カ月しないうちに俺の方が前蹴りも回し蹴りもスピードもパワーもあるように感じた。そのころから勇太郎がオレとあまり口をきかなくなった。
なんとなく勇太郎の気持が分かる。
でもオレの方が上手いのだからしょうがない。
入門して6カ月したら勇太郎と同じオレンジベルトになっていた。
そのころからなんとなく空手の稽古に飽きがきたと言うか、なんかカラテはこんなものかと思うようなって来て稽古から足が段々遠のいてしまった。
夏休みから自然に稽古を休んでしまい3カ月ぐらい御無沙汰してしまった。
昨日勇太郎からメールがきて、マサ先生がオレの事聞いていたと言っていたので今日は久しぶりに道場に顔を出した。
稽古中、勇太郎の動きや技のかけ方を見たが前とあまり変わりがないように見えた。
なんか良く解らないが、相変わらず鈍そうに見える。
組手の時間になり、先生がやるかといったので勿論やると言った。
何と相手は勇太郎がすると言って向かい合った。
簡単に技が決まると思ったのだが全然違った。
惨めだった。こんなにやられるなんて思ってもいなかった。
勇太郎の奴はいつものようにどたどたと鈍い動きをしているし、技も切れると思わなかった。遊んでやろう・・・と思っていたが、俺の技がまったく止められてしまった。なんでか分からなかった。
いつも組手をやると俺の技が簡単に決まったのに、今日は全部カット、と言うより簡単に受けられてしまった。
なんか俺の技を全部知っているような感じがした。
稽古が終わって着替えて帰ろうとしたら、マサ先生が「オイ、信吾どうした、元気がないな。お前今日の組手、勇太郎に技を読まれていたなあー」
「・・・・」
「何故だが分かるか、おまえが休んでいた3カ月、勇太郎は毎日稽古をしていたぞう」
「オスー」
「いいか、器用な奴、運動神経の発達している奴はとかく稽古を甘く見がちだ、・・」
「・・・オ~ス」
「意味が分かるか?・・・分からないだろうな。技は身体の中に溶けこまさなくてはいけないんだ。分かるか?」
「オス」と返事をして、道場を出る。歩きながらマサ先生のいった事を考えた。
勇太郎より俺の方がずぅーと、ずぅーと運動神経は発達している。
勇太郎は正直に言って鈍い。だからいつも簡単に回し蹴りから前蹴りの変化する技が決まる。その後、前蹴りから回し蹴りに行くと勇太郎の顔面、水月を決められる。今日はそのコンビネーションを全部止まれれてしまった。
なんだか、いつも勇太郎の顔が目の前に来ていた。
蹴るタイミングも動くタイミングもくれなかった。
それでも強引に技を出すと簡単に受けられた。
奴の左右の突きが胸に、下段の回し蹴りが脚にまだ残っている。頭に来る。

 

 

俺の名前は松木勇太郎、中学二年生親父の勧めで1年半前からカラテを始めた。
或る日学校の昼休みに屋上で誰もいないと思って前屈立ちと正拳の稽古をしていたら信吾の奴に見つかってしまった。
信吾はクラスの中でも一番人気があり女の子にもモテモテな奴だ。
俺とは全く逆で勉強もスポーツもなんでも、かるくこなして仕舞う、器用な奴。
信吾が「何やってるんだぁ?」って聞いてきたので「カラテの稽古だ」と言ったらゲラゲラ笑い出した。
頭にきたけど、道場のチラシを渡した。
信吾が「チョット突いて蹴ってみろ・・」と言ったので、正拳から回し蹴りのコンビネーションを見せたら結構マジに感心していた。
マサ先生がいつも「友達を道場に連れて来い、カラテはきっとそいつらの為になる・・」なんって言っていたので試しに誘った。
いつも、鏡ばかり見て、カッコウばかり気にしている信吾は入門する訳がないと思ってたらなんと奴、入門した。
最初の内は俺の方が上手かったのだが、半年もしないうちに追いつかれてしまった。それからは組手になってもボコボコやられて、嫌になった。
信吾と口を聞きたくなくなったし、カラテの稽古も止めようかと思った。
他に趣味のないので我慢して稽古を続けていた。
夏休み前から信吾が稽古に来なくなった。
何故だか解らなかったが、きっと信吾の頭でっかちは、カラテをマスターしたように思っているのだろう。
マサ先生がよく言う、「稽古は頭から入っちゃだめだぁ、身体から入るんだぁ
お前達はチョット稽古しただけで分かった様な気持ちになっているが、違うんだぁ。頭で分かっても駄目なんだぁ、身体で解らない。そこに武道の素晴らしさがあるんだぞぅ・・・稽古は続けないと技や動きはすぐ消えてしまうよ」
なんだか良く解らないいが、なんとなく胸に感じた。
だから夏休みも稽古を続けた。暑い夏がやっと終わって学校が始まった。
マサ先生が信吾の事を聞いてきたので、メールしたら次の日道場に来た。
また信吾に組手でコケにされるのかと思った。
ところが自分でもビックリするぐらいに驚いた。
・・・やっぱりマサ先生の言うとおりだった。

 

・・・夏休み中も稽古を続けていたら、マサ先生が「とにかく汗を流せ、稽古だぁ、稽古の後に必ず何かを感じる。ひらけてくるんだ。不思議な感覚を覚えるぞう・・・もしかして小さな開眼かもしれない。」
「マサ先生、鈍い僕にもそんな体験が出来るんですか?」
「勇太郎、鈍い速いはあまり関係がないんだ、それは普通に比較したら器用な奴、不器用な奴はすぐ分かるような感じがするが、それは表面的な事で技を身に付けるのはそんなに簡単にできる事ではないんだよ、頭で分かってもしょうがないんだ。器用な奴は表面的にはその技をすぐ呑み込むが、身体に深く身に付けていない奴が多い。すぐに気持が次の技に移ったしまうんだぁ。一つの技を深く深く身体に身に付けようとしないで、次の技、その次の技と気が移るんだぁ。忍耐と言うか深く身に付けるという事を軽く見ているんだぁ、それは自分の器用さに自惚れているからだ」
マサ先生の話は何か難しく感じたが、なんとなく分かった感じがした。
マサ先生が「勇太郎いいか、人間それほど器用、不器用の差はないんだ、稽古を続けた奴が技や動きを会得するんだ・・・だから空手の稽古は誤魔化しがきかないんだよう・・・・ハッハ」
マサ先生の話がまだ僕の胸の中で快く弾んでいる・・・信吾にはいつも簡単に顔面や水月を蹴られていた。惨めだった。
道場で信吾の顔を見た時ちょっと不安になったが、丹田に気合を入れると、なんとなく落ち着いてきた。

 

組手の最中、今日はぜんぶ信吾の蹴りが読めた。あいつの焦りも感じた。
最初に左の正拳がヒットした時、信吾の顔が驚いたように見えた。右の逆突きから右の下段回し蹴りを決めた時、自分でも信じられない感じがした。
信吾が右にフェントして左にまわろうとして動いたのが簡単に読めた。
信吾の動きに合して右の後ろ蹴りを出したら、奴は、かろうじて受けたが道場の壁までスットンでいた。信吾が眼をマンマルにしていた。
なんか自分のタイミングで組手が出来た。
いい気分だぁなんとなく自信みたいなものを感じた。
そうなんだぁ、やれば出来るんだ。
もっともっと稽古がしたくなった。カラテ最高だぁ。
もしかして俺はクールかもしれない。ウフウフだぁ。

 

 

 

第三話は、3月20日公開予定
内容は、第一話続編です。お楽しみに!

 

 

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コメント (0) | 2015/02/20

内弟子 in America,道場物語

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